記者会見文

西暦2001年5月31日


 まず、今回の判決は、国・大学当局の主張を鵜呑みにした不当なものであり、話し合いによる解決の道を閉ざすものだと言わざるを得ません。

 駒場寮の「明け渡し」訴訟は、1997年に国・東京大学当局が学生を提訴したことから始まりました。そして、2000年3月に東京地方裁判所に於いて、駒場寮の「明け渡し」を認める不当判決が下されましが、それには地裁判決では上級裁判所の審理を待たずに明け渡しを執行できる仮執行宣言が何の説明もなく付帯されており、私たちはこれに対して、即日控訴を行いました。そして迎えた、今日の控訴審判決は、私たちの控訴を却下し、仮執行宣言も含む地裁での結果を追認するものでした。このことは、裁判での解決が学生の声を黙殺するための手段であることを示していると言えます。
 また、先日、東京大学教養学部で学生投票が行われ、この学生投票において、駒場寮の存続を求める主文が賛成多数で批准されました。このような学生の声があるにも関わらず、控訴審で十分な審理が行われず、今回のような判決が出てしまったことに憤りを感じます。

 駒場寮は、東京大学教養学部駒場キャンパス内にある学生寮で、学生が入寮選考や財政管理の一切を行う学生自治寮です。そして、お金のない苦学生の学ぶ権利を保障し、クラス・サークルなど学生の自主的活動の場として活用され、相部屋制度や寮自治を通じて学生の人格形成の場となるなど長年に渡り、かけがえのない意義を果たしてきました。今も100名を大きく上回る寮生が生活し、クラス活動の場として貸し出しているクラスルームは一年生クラスの9割が利用しています。しかし、教養学部当局は、このような駒場寮を一方的かつ強行的に「廃寮」にしようとしてきているのです。

 駒場寮「廃寮」問題は、東京大学教養学部当局が1991年10月9日の臨時教授会において、私たち駒場寮生・学生に一切秘密にしたまま、一方的に駒場寮の「廃寮」を決定したことから始まりました。この「決定」は当事者不在の決定であり、さらには寮運営に関して学生の意見を採り入れることを明記した『84合意書』や大学自治における学生の権利を認めている『東大確認書』にも明確に反するものです。このような教養学部当局の学生との合意を踏みにじる行為が駒場寮問題を生んだのです。
 そして、同時に駒場寮の代替施設として、70年代以降引き継がれている時代錯誤な旧文部省の学寮敵視政策に合致する形で作られた三鷹国際学生宿舎計画やCCCL計画・マスタープランという駒場寮の跡地利用計画を駒場寮「廃寮」と切り離せないものとして提示し、駒場寮の「廃寮」を正当化と既成事実化をしようとしてきました。しかし、これらの計画も、実際上は駒場寮の「廃寮」と切り離せないものではなく、駒場寮を「廃寮」にしなければいけないという説明がなされたのも、学生に駒場寮「廃寮」を認めさせるためです。たとえば、93年に発表された駒場寮跡地利用計画であるCCCL計画は、後の交渉で当局自身が「絵に描いた餅」と表現している、駒場寮「廃寮」のための道具に過ぎないものでした。

 このように進められてきた駒場寮の「廃寮」に学生は「廃寮」反対のストライキや学生投票によって、一貫して反対の意思を示してきました。しかし、学部当局はこれらの学生の声を無視して、96年に「廃寮」を宣言し、その後は駒場寮の電気・ガス停止、ガードマンによる寮生の叩き出しなど、数々の暴力行為を繰り返してきました。その最たるものが学生を裁判に訴えるという暴挙なのです。

 そもそも、この問題は憲法によって保障されている大学自治内部の問題であり、裁判での審理になじまない問題です。これは、大学内部の紛争に関しては司法権は及ばないと言う最高裁判決から言えることですが、問題の解決を裁判所に委ねると言うことは大学自治自体を形骸化させる危険を含むものでもあり、これは認めることはできません。

 私たちは、教養学部当局を大学自治を擁護するという本来の立場に立ち返らせ、この問題を学内で解決するために、学生から駒場寮問題に対する意思表示をし続けてきました。先日は、冒頭で述べたように、5月18日から5月25日まで「教養学部当局のキャンパス計画は、クラスルームなどの自主的活動の場や、学内居住施設などが失われる内容になっている。抜本改修や『400人振り替え提案』を実現することにより、駒場寮を存続させることを学部当局に求めていこう。」という主文で学生投票を行い、有効投票数3773票のうち2050票で批准させることができました。そして、昨日、5月30日にこの投票結果に基づく教養学部長との団体交渉を教養学部学生自治会との連名で申し入れました。主文に含まれている『400人振り替え提案』というのは、教養学部当局の不当な計画の白紙撤回ではなく、現状を鑑みた上で一番現実的だと考えられる問題の解決案です。教養学部当局に対しては、暴力的な強制執行によってこの問題を解決してしまうのではなく、このように学生の総意として駒場寮問題の解決案が示されたことを真摯に受け止め、駒場寮「廃寮」を前提としない誠実な話し合いを持つことを求めます。

 また、この学生投票では、独立行政法人化に反対する主文と教養学部学生自治会にかけられた弾圧に抗議する主文も同時に批准されました。全国的に見ても、独立行政法人化をはじめとする学生の自主的活動縮小の流れは強められています。駒場寮の問題もこれ単独で起こっているわけではなく、全国的な大学再編・教育再編の流れの顕著な事象の一つです。

 最後になりますが、控訴審でも慎重な審理・公正な判断を求める署名を集め、今日までに7700筆近く裁判所に提出しました。この数は地裁のときの署名数を大きく上回り、この問題に関する社会的関心の高まりを示しているものです。私たちは、このような社会的関心と今回の学生投票で示された学生世論を背景に、教養学部当局に学内の話し合いを求めていきます。先ほど述べたように、全国的な視点から駒場寮の問題を捉え、今後も全ての人たちと力を合わせて全力で駒場寮存続に向けて取り組んでいく決意です。ありがとうございました。

駒場寮委員会


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