「裁判」について

駒場寮は「違法」ではない

〜そもそも教養学部当局の言う「違法」とは何を指すのか〜

 読者の方は、「駒場寮への入寮募集、また駒場寮に立ち入ることは『違法』であるから応じないように」というような東京大学名の文章を目にするかもしれません。しかし、それは間違いだと言わざるを得ません。

 駒場寮に入寮することが良いことか悪いことかは、大学教職員と駒場寮生・学生相互の議論によって、これから判断されるべきものです。したがって、その議論を尽くさずして、駒場寮に入寮することは「違法」だと言うことは、一方的な宣伝にすぎません。また、実際のところ、駒場寮への入寮は「違法」ではありません。現在、駒場寮生によって構成される駒場寮自治会は、駒場寮を使用することが許されているのです。その駒場寮自治会が駒場寮の使用を続けることは、法的に何ら問題はありませんし、社会的規則にも反していません。

 このことを論証するには、現在、駒場寮生に駒場寮を明け渡させるべく、教養学部当局の申し立てている裁判に言及する必要があります。
 1997年10月、教養学部当局と国は、駒場寮生と、駒場寮生全員によって構成される駒場寮自治会などを相手取り、駒場寮の「明け渡し」を求める裁判を東京地裁に申し立てました。この裁判上の争点は、「占有権」をめぐるものになります。

 駒場寮は国有財産なので、形式的には所有権は国にあります。しかし、駒場寮生には駒場寮を使用する権利(=占有権)があります。駒場寮の「明け渡し」をめぐる裁判は、この占有権の有無をめぐるものになるわけです。学部当局側は、寮生に占有権が既にないと主張し、駒場寮生側は占有権は存在すると主張しています。このように主張が対立している場合、裁判所の判決が確定するまでは現状が維持されなければなりません。そのことは、裁判の申し立てに先立って行われた「占有移転禁止仮処分」において、駒場寮を裁判所の管轄下に置き、駒場寮自治会と寮生には使用を許す、ということではっきり示されています。駒場寮の使用は、法的に許されているのです。

 そして、裁判という形でこの問題に決着をつけることそのものが考えられなければなりません。そもそも、東京大学においては、「大学内の問題は、大学内における当事者どうしの話し合いによって解決する」という大学自治の原則が、長年にわたって確立されてきました。したがって、学内問題である駒場寮問題を裁判で「解決」しようとすることは、この原則を真っ向から踏みにじるものなのです。

 このように、駒場寮自治会・駒場寮生は、居住の法的正当性を立証すると同時に、裁判そのものの問題性をも指摘しています。したがって、新入生の皆さんには、駒場寮への入寮・使用が「違法」であるという宣伝は、あくまでも宣伝として受け取ってほしいと思います。「もし、学校の言うことを聞かない時には、何か処分があるんじゃない?」と考える人には、その心配はない、と言っておきましょう。学生の思想信条の自由は、大学にとっての生命であり、そのぐらいは教官も分かっているはずだからです。
 最後に、「明け渡し」裁判の現状について説明したいと思います。
 昨年3月に東京地裁は、学部当局・国側の主張をほぼそのまま追認する、「明け渡し」判決を下しました。私たち寮生側は、この不当判決に対して、ただちに高裁に控訴するとともに、強制執行停止の申し立てを行い、これらはいずれも「理由がある」として裁判所に認められました。その結果、現在では、東京高裁において第二審の審理が継続しているところです。

 私たち駒場寮自治会は、先述したように、あくまでも話し合いによる問題解決の実現に向けて、「明け渡し」裁判の取り下げを求める取り組みを進めてきており、現在、裁判によらない問題解決に向けた気運が大きく盛り上がりつつあります。このような状況にあって、駒場寮の「明け渡し」裁判、そして駒場寮問題の行方は、現在の寮生である私たちに加え、今年入学してくる新入生・新入寮生たちにかかっているのです。
 そして、駒場寮を存続させていくためには、より多くの人々が駒場寮で生活し、活動することが必要なのです。

※なお、「明け渡し」裁判に関するより詳しいことについては、駒場寮委員会まで気軽にお問い合わせ下さい


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