(以下、2000年2月執筆)

第20章 盛り上がる99年秋の運動

一、秋の寮祭での圧倒的成功、そして学生投票へ
 自治について考えるとき、「自治とは何か」を自ら考えていくことが大きな意味を持つ。そして、この問いに答える一つの大きな手がかりを与えてくれるのが寮祭である。
 寮祭は、しばしば「一から自分たちの手で造り上げていく祭り」と形容される。事実、寮祭ははじめからやることが決まっているわけではなく、まさに寮祭そのものをやるかどうかから議論が始まり、寮生の総意によってそれが決定される。そして、どのような理念を掲げ、それを達成するためには何をすべきなのか、をひとつひとつ議論していく。その過程を通じて、寮祭はより意義深いものになっていくのである。
 今回の寮祭では、寮生以外にも寮の意義を実感してもらうことを主眼とし、様々な企画を作成・検討し、準備を進めた。寮祭が近づくにつれ、寮内の気運も高まり、圧倒的な寮生の結集をもって寮祭を行うことになる。その象徴が、北寮前の超巨大立て看である。ベニヤ36枚を使用し、11m×6mというあり得ないほどの立て看板にきらりと光る「廃寮粉祭」の文字。まさに、寮生の命をかけてこの立て看は屹立した。そして、この立て看前のステージで繰り広げられる数々のイベント、寮前の屋台、寮内での企画。寮生の圧倒的結集のもと、今年も学内外に「駒場寮健在」を明確に知らしめたのである。
 そして、この秋の寮祭の盛り上がりをもとに、私達は学生投票での圧倒的批准を勝ち取るのである。

二、学生投票での圧倒的勝利
 この学生投票は、99年11月2日、浅野攝朗教養学部長および永野三郎学部長特別補佐に対し、駒場寮の「明け渡し」裁判を取り下げ、駒場寮問題を話し合いによって解決すること、及び駒場寮「廃寮」計画をいったん取りやめ、学生との合意に基づくキャンパス造りを行うことを求める要求書を提出したことに端を発する。大学自治の原則を破り、学生・寮生の意思を踏みにじって「廃寮」を強行してきた学部当局の不当性は誰の目にも明かである。しかし、現在においても不当な裁判を取り下げずに、破綻した理論のもと「廃寮」の強行を自己目的としている学部当局にたいし直接要求を行ったのであるが、驚くべきことに当局はこの要求書に対し回答すらしなかったのである。
 この、極めて不当な態度を改めさせ、「廃寮」計画の撤回を実現するために、駒場寮自治会は学生自治会・学友会学生理事会と共同で、要求書と同様の内容の主文を代議員大会へ提起、これが可決され学生投票が発議された。
 学生投票においてこの主文は、賛成2343・反対1341・白票431という結果をもって批准された。さらに、14のクラスアピールも上がっている。このことは、当局による一方的「廃寮」宣言以降の全学生による公的な「廃寮」反対の意思表示であるという点で、特に強調される必要があろう。本文でも述べてきたように、当局は「廃寮」の既成事実化のためのプロパガンダを連日繰り返し、しかも学生投票期間中にもこの学生投票を破壊するための嘘にまみれた文書を全学生に配ったにもかかわらず、「廃寮」に反対する主文が批准されたのである。「廃寮」宣言後4年が経過しても、未だに当局は学生の支持を得ることはできないのである。駒場寮を支持する世論が根強いことをここに具体的な数をもって大きく打ち出すことができたと言えよう。
 このように、学生の意見は一貫して「廃寮」反対であり、話し合いによる解決を求めている。学部当局に求められているのは、批准された主文にあるように、今こそ「廃寮」計画を撤回し、学生との誠実な交渉につき、今後のキャンパスについて充分に話し合いを行って一つ一つ合意を作っていくことであろう。どんな餌で学生を釣ろうとしても、私達はきちんと物事の本質を見抜いているのである。不誠実な態度で計画を無理矢理推し進めようとしても、私達は決して許さないのである。

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