「執行異議申立書」


「1996年10月」 | 資料集成

1996年10月31日
東京地方裁判所
 民事第21部 御 中

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

申立人ら訴訟代理人    弁護士  加 藤 健 次
              同   尾 林 芳 匡
              同   藤 田 正 人

申立の趣旨

  1. 東京地方裁判所執行官は、別紙当事者目録記載の当事者間の東京 地方裁判所1996年(ヨ)第4302号仮処分事件の同年9月3日、別紙物件 目録記載の建物についてなした同年(執ハ)第915ないし 934号仮処 分執行事件の執行を取り消さなければならない。
    との裁判を求める。

申立の理由

  1. 本件仮処分事件における占有認定の誤り本仮処分執行事件において、東京 地方裁判所執行官は、「駒場寮委員会」が別紙物件目録記載の建物三棟(以下、 「本件建物」という。)を管理占有していることを認定していながら、他方、 各債務者が本件建物を「専用」している旨の認定をなし、その上で本件仮処分 を執行した。また、執行官は、本件仮処分執行事件の仮処分調書の(参考事項) 欄において、「占有者債務者ら20名並びに第三者駒場寮委員会のほか氏名不詳 者ら数名(サークルを含む)なお、氏名不詳者ら数名については本日のところ 委員会の占有補助者であるか否かは不明である」旨の認定をなしている。しか しながら、執行官の上記認定は、
    (1)各債務者が本件建物「全部」を占有していると認定した点、
    (2)第三者「駒場寮委員会」が本件建物を管理占有していると認定 した点、
    (3)債務者ら20名及び駒場寮委員会以外に、氏名不詳者ら数名が本 件建物を占有していると認定した点
    においていずれも誤りであって、かかる誤った占有認定を前提としてな された本件仮処分執行事件は違法なものであるから直ちに取り消されなければ ならない。
  2. 本件建物全体の占有状況
    (1)本件建物は正式名称を「東京大学教養学部駒場寄宿寮」(以下、「駒場 寮」という。)といい、1950年頃から現在に至るまで、「駒場寄宿寮規約」等 関連規約に基づき、寄宿寮生(以下、「寮生」という。)によって構成される、 権利能力無き社団たる「東京大学駒場寄宿寮自治会」(以下、「寮自治会」と いう。)が占有管理してきた。

    (2)「駒場寮委員会」(以下、「寮委員会」という。)は、寮自治 会の最高決議機関たる「総代会」における決議承認、並びに「全寮投 票」または「寮生大会」における決議に表明された「寮自治会」の意 思に従って、寮自治会の事務を執行する寮自治会の執行機関である。  寮委員会は寮委員長及び寮委員によって構成されるが、寮委員長は全寮生に よる選挙によって選出される寮自治会の代表者であり、寮委員は寮委員長の指 名及び「総代会」の承認を経て就任するものである。

    (3)従って、寮委員会は寮自治会の執行機関に過ぎないのであるから、そも そも独立に本件建物全体を占有管理する権限を有するものでない。即ち、本件 執行事件においては、執行官が債務者以外の第三者が本件建物を占有管理して いる旨を認定している点は誤りではないが、その第三者を「寮自治会」ではな く「寮委員会」であるとした上記認定の誤りはもはや自明である。

  3. 債務者を含む各寮生の占有状況

    (1)このように、本件建物は寮自治会が占有管理するものであると ころ、本件建物の居住者たる各寮生は、寮委員会の許可を得て駒場寮 に入寮し、本件建物内の居住すべき部屋が決定した場合には寮委員会 に届出をなし、寮委員会の許可を得て退寮することとされており、現 実にもそのような運用がなされてきた。即ち、本件建物の内、債務者 を含む各寮生が独自に直接管理占有する部分は、各寮生の居住する部 屋(またはサークル部屋)内のみであり、その他の共用部分は寮自治 会が直接管理占有している。

    (2)本件仮処分執行がなされた本年 9月10日当時、本件各債務者が 居住していた部屋は当事者目録記載の各居住部屋(サークル部屋)の とおりである。従って、各債務者らは、本件建物の内、各居住部屋 (サークル部屋)以外は管理占有するものではないから、これに反す る執行官の占有認定は誤りである。なお、執行官は、本件仮処分執行 調書において、各債務者が本件建物を「専用」している旨の記載をな している。この「専用」なる用語については、必ずしもその意義内容 が明らかではないが、仮に「債務者らだけが使用している」という意 義内容であるとすれば、これも明らかに誤りである。

    (3)本件建物には、本件執行当時、寮委員会の許可を得て、121名の 寮生が入寮居住している。これらの各寮生も、債務者ら同様、本件建 物内のその居住する部屋(サークル部屋)内を直接管理占有している。 即ち、本件建物は、寮自治会以外に、121名の寮生が占有しているも のである。本件執行調書添付の図面においても、執行官は債務者以外 の多数の者が居住している旨を記載している。にも拘わらず、何故に 上記のような占有認定をなしたのかは不明であるが、いずれにせよ、 執行官の、寮委員会及び債務者ら20名以外に「氏名不詳者ら数名」の みが本件建物を占有している旨の占有認定もやはり誤りである。

  4. 結語
     以上のとおり、本件仮処分執行事件における執行官の占有認定には 重大な誤りが存する。特に、本件各債務者らが本件建物全体を占有し ている旨の認定の誤りは決定的であって、これを前提としてなされた 本件仮処分執行は何らの正当性も有しないものである。

     申立人代理人らは、執行官がかかる誤った占有認定をなすことのな いよう、本年9月19日、同月27日までに本件建物の占有状況を説明し た陳述書を執行官に提出する旨申し入れ、執行官もこれを待って執行 調書を作成する旨確約していた。ところが、執行官は、どういう訳か これを待たずに執行調書を作成しため、本件仮処分執行調書には上記 のような誤った占有認定の記載がなされたのである。申立人らとして は、将来、仮に明渡を求める本案訴訟が提起された場合には、本件各 債務者らの本件建物全体についての占有を否認し、本件建物全体は寮 自治会が占有管理するものであることを主張立証する所存であるが、 本件仮処分執行はこれに反するものであるから、直ちに取り消されな ければならない。

    以 上

  証 拠 資 料

甲第1号証  駒場寮規約
甲第2号証  公示
甲第3号証  陳述書
甲第4号証  合意書外
甲第5号証  供託書
甲第6号証  陳述書
甲第7号証  同室願い
甲第8号証  部屋割一覧表
甲第9号証  写真

  添 付 書 類

訴訟委任状 9通
資格証明書(選挙管理委員会公示書写し)1通


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