「申入書」


「1996年8-9月」へ | 資料集成


※原文は縦書きです。

目黒区駒場三-八-一        
東京大学教養学部学生自治会  
自治委員長
通知人 (個人名)      

右同所              
東京大学駒場寮委員長     
同   (個人名)      

新宿区(某所)          
(某法律事務所)       
(電話番号)         
右代理人           
弁護士 (個人名)      

目黒区駒場三-八-一
  東京大学教養学部
  学部長 (個人名)殿

この郵便物は平成8年8月22日第99013号書留内容証明郵便物として差し出した ことを証明します

東京高等裁判所内郵便局長

申 入 書

冠省  この度、東京大学教養学部学生自治会自治委員長(個人名)、東京大 学駒場寮委員長(個人名)の両氏から駒場寮問題について委任を受け、当職ら 後記各弁護士が代理人となりましたので、通知いたします。

  一
 この間、東京大学教養学部当局は、一方的に駒場寮が本年三月三一日を もって廃止されたとして、不当にも寮生に対し執拗に退寮を迫っています。加 えて、教養学部当局は、駒場寮への電気・ガスの供給を停止し実力で寮生の排 除を図り、さらには寮の建物の一部を取り壊すという非常識きわまりない行為 まで行いました。
 当職らは、本書面をもって、このような教養学部当局の人権侵害行為に対し 強く抗議します。同時に、駒場寮への電気・ガスの供給を直ちに再開すること、 寮の建物の取り壊しをしないことを強く求めます。
  二
 駒場寮の存続をめぐる問題は、本来、大学自治の構成員である教養学部 当局と学生との合意に基づいて決定されるべきものです。とくに、駒場寮が学 生の生活と自治の場であることを考えれば、この原則はいっそう守られなけれ ばなりません。しかも一九八四年には、当時の教養学部第八委員会と学生との 間で「寮生活に重大な関わりのある問題についての大学の公的な意思表明があ るとき、第八委員会は、寮生の意見を十分に把握・検討して、事前に大学の諸 機関に反映させるよう努力する」との確約がなされています。
 この間の教養学部の態度は、大学自治の原則と右確約に違反するものであり、 現在の事態を招いた責任が、学生の意見を無視し当局の意向を押しつけようと した学部当局の側にあることは明白です。
 先日学生自治会が行った全学投票においても、当局が電気・ガスの供給を再 開して学生との話し合いによる解決を図るべきであるという意見が圧倒的多数 を占めています。当職らは、教養学部当局が、駒場寮廃止の方針を撤回して、 学生との間で駒場寮問題についての交渉を再開し、解決に向けた合意形成を真 剣に追求するようあらためて申し入れます。
  三
 最近、教養学部当局は、法的手段を云々しているようです。しかし、教 養学部当局が、学生との話し合いに応ずることなく、法的手段によってこの問 題の解決を図ろうとすることは、大学自治を自ら放棄するに等しい行為であり、 大学自治の歴史に取り返しのつかない汚点を残すものにほかなりません。
 にもかかわらず、教養学部当局が法的手段を講ずる場合には、当方としても、 この間教養学部当局が寮生らに加えた数々の人権侵害行為に対し、実行者個人 の責任も含めて徹底的に法的責任を追及することになります。この点ご承知お きください。

 最後に、駒場寮問題について、教養学部当局が学問の府としての理性に則っ た行動をされるよう期待します。

(代理人の表示)
       (9名の弁護士の法律事務所の住所及び氏名を列挙)

  一九九六年八月二一日


「1996年8-9月」へ | 資料集成