平成12年(ネ)第2310号建物明渡等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成9年(ワ)第20691号)
平成13年4月19日 口頭弁論終結
第2 事案の概要
原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり訂正する。
1 原判決4頁最終行の「全日本学生自治会連合」を「全日本学生寮自治会連合」と改める。
2 同8頁最終行の「合意された」の次に「。」を加える。
3 同55頁1行目の「法令に規定ナキ事項」を「法令ニ規定ナキ事項」と改める。
第3 争点に対する判断
次のとおり、付加、訂正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」欄の一項ないし五項に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決67頁3行目から69頁5行目までを次のとおり改める。
「 証拠(甲8、10)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人駒場寮自治会を含めた控訴人ら全員は、前提事実のとおり、いずれも東京地方裁判所により発せられた二つの仮処分決定のうちいずれかの名宛人とされていたことが認められる。
控訴人らは、控訴人駒場寮自治会を除く控訴人ら(ただし、後記2の控訴人らを除く。)は、特定の1室のみを居室として使用しているものであって、本件建物全体を共同占有しているわけではない旨主張する。しかし、本件建物の占有者らは、廃寮が決定した本件建物を占有してその使用を継続しようとするものであり、自己が直接使用する居室だけでなく、他の居室や共用部分を含めた本件建物全体を事実的支配することにより、共同してその明渡しや取り壊しを拒否しなければ、個々の居室についても使用を継続することは不可能な状況にあり、そして、実際に控訴人全日本学生寮自治会連合、同東京都学生寮自治会連合を含めた本件建物の占有者らが共同して本件建物の明渡しを拒絶し、東京大学側による本件建物の占有状況の調査を有形力を行使して拒んだこと、駒場寮への新規入寮者の募集を継続して行い、入寮の可否を決定し、入寮以外の用途においても、東京大学の学生や学外者に対して駒場寮の使用を呼びかけていること、他にも駒場寮の渡り廊下の取り壊し作業を妨害したり、電気を違法に供給したりしていたことは、既に述べたとおりあるから、これまで作業妨害などの行為を現認されていない者を含めて、本件建物占有者ら全員が、本件建物全体を共同占有していることを認めることができる。
2 控訴人らは、控訴人====、同====、同====、同====、同====、同====、同====、同====には、特定の1室に対する占有もなかった旨主張するので、検討する。
(一)控訴人====、同====、同====、同====、同====について
(1) 証拠(甲5、10、11、14、28の1、34、46、47、53の1ないし5、乙40の12)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人====は、教養学部が駒場寮について新規入寮募集を停止することとした平成7年4月に東京大学に入学し、学長が平成8年3月31日をもって駒場寮を廃寮とすることを決定した平成7年10月17日より後に駒場寮に入寮したものであるが、平成8年7月8日に学生が配布したビラには同控訴人が駒場寮の廃寮反対派の寮生である旨が記載されており、平成9年3月6日の時点で同控訴人が旧中寮32Sを占有使用していたことはこれを自認しており、平成8年11月28日に旧南ホールへの電気供給停止措置がされた際、学生会館近くにいた教養学部教授大貫隆教授に対し、他の寮生らとともに暴力的行為に及び、平成9年3月30日及び同年4月10日にキャンパスプラザ建設工事のための仮囲い設置工事が行われた際には、トラックの荷台に載ったり、トラックの前に座り込むなど積極的に妨害行為に加わり、同年5月23日旧風呂建物につき入口の破壊された封鎖板の修復及び立入禁止の表示の添付の作業に取りかかろうとした池田貞雄東京大学教養学部等学生課長補佐ほか3名が、学生らにその作業を妨害された上、同課長補佐が周囲を取り囲まれて動けない状況になった際、これらの学生らの行動に加わり、同年6月28日の旧北寮東側渡り廊下及び庇取り壊し工事の際にもその作業を妨害したこと、そして、平成9年8月7日に同年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定が執行された際、当時の控訴人駒場寮自治会代表者であった控訴人====は、執行官に対し、控訴人====が本件建物に居住している旨を述ベ、執行官はこれに基づき控訴人====が本件建物を共同占有しているものと認定したこと、以上の事実が認められ、上記認定事実によれば、控訴人====は、上記の仮処分決定が執行された際、本件建物を共同占有していたものというべきである。もっとも、控訴人====の陳述書である乙133及び219には、同控訴人が平成9年6月1日で駒場寮を退寮し、上記の仮処分決定が執行された際には本件建物を占有していなかった旨の記載があり、控訴人====の陳述書である乙126には、上記の仮処分決定が執行された際、控訴人====が執行官に対し、控訴人====が本件建物に居住していると述べた事実はなかった旨の記載がある。しかし、上記の仮処分決定の執行調書である甲11によれば、上記の仮処分決定の執行の際、執行官は、控訴人====が本件建物には居住していないと述べた====、====、====、====、====、====、====の7名については、この控訴人====の陳述に基づき執行不能の措置を採っていることが認められるのであって、控訴人====において、控訴人====が本件建物に居住していると述べていないにもかかわらず、執行官は、虚偽の認定をし、その旨を執行調書に記載するような理由を見い出すことはできないから、上記の控訴人====の陳述書の記載は採用することができない。その上、上記のとおり、控訴人====は、駒場寮廃寮決定後に本件建物に入寮した上、東京大学が行う廃寮のための工事や作業などに対し積極的な妨害行為に出ていることを考えれば、控訴人====が平成9年6月1日で駒場寮を退寮した旨の上記の同控訴人の陳述書の記載は採用し難く、同控訴人は、駒場寮の廃寮を阻止するため、その後も本件建物に居住し、上記の仮処分決定の執行がされた際にも本件建物を共同占有していたものというべきである。なお、控訴人====の住民票である乙134によれば、平成7年4月10日から平成12年3月31日まで同控訴人の住民票上の住所は====であったことが認められるが、上記のとおり同控訴人が駒場寮に在寮していたことを自認する期間もこれに含まれているから、何ら上記の認定を覆すものではなく、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(2) 証拠(甲5、6の1、8、9、10、11、12、47、54の1ないし6、55、乙40の28)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人====は、昭和62年4月東京大学教養学部文科三類に入学し、平成3年4月には同大学文学部二類に進学したが、平成7年3月で同大学を退学したこと、しかし、同年4月1日より後に本件建物の占有を始め、平成8年9月10日に同年(ヨ)第4302号事件の仮処分決定が執行された際、本件控訴人ら代理人○○○○弁護士は、控訴人====を含む債務者らが本件建物を専用している旨の執行官の認定に特に異議を述べない旨の指示説明をし、執行官はこの指示説明などに基づき同控訴人が本件建物を共同占有している事実を認定したこと、この仮処分執行に対する執行異議申立書において、控訴人====の住所は中野区内とされているが、「(サークル部屋北寮15S)」と付記されており、同控訴人らは、上記仮処分執行当時、各債務者らは各居住部屋(サークル部屋)に居住しており、これを管理占有している旨主張していること、控訴人====は平成9年3月6日の時点で旧北寮15Sを自分が所属するサークル「風速0・5」の部屋として占有使用していることを自認していること、同年8月7日に同年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定が執行された際にも、控訴人====が旧北寮25Bを使用していること及び「風速0・5サークル」が旧北寮15Sを使用していることが明らかになり、同控訴人は、立会人としてその仮処分調書に署名もしていること、控訴人====は、目黒区長に対して、平成7年7月10日駒場寮に転入した旨の住民基本台帳法に基づく届出をしていること、同控訴人においても、東京大学職員らの管理や作業を妨害する行為に出ていたこと、以上の事実が認められるから、平成8年(ヨ)第4302号事件の仮処分決定が執行された際、控訴人====が本件建物を共同占有していたことは明らかであって、同人の陳述書である乙42及び221には、サークル(北寮15S)のOBとして後輩の指導・交流のためサークル部屋を定期的に訪問している等の記載があるが、上記認定に照らして採用し難く、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(3) 証拠(甲10、11、14、28の1、30、56、57、58の1、2、乙40の29)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人====は、平成5年4月に駒場寮に入寮し、平成7年4月1日工学部船舶海洋工学科に進学したが、平成8年秋の寮祭のパンフレットの編集長を務め、平成9年3月6日の時点で旧北寮19Bを占有していることを自認する旨の陳述書を作成していること、平成9年8月7日の同年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定執行の際、控訴人====は、控訴人====が本件建物に居住している旨を述ベ、執行官はこのことと旧北寮19B内の文書又は郵便物に基づき控訴人====が本件建物を共同占有しているものと認定したこと、控訴人====は、旧北寮19Bを部室とする「====新聞社」なるサークルを主宰し、同年2月1日付け第24号の同新聞には、控訴人====の部屋が駒場寮内に存在する旨の記載があること、同年11月1日付け第27号の同新聞には、同控訴人がその日の気分次第で文京区か目黒区に泊まり、双方の区に住んでいる旨の記載があること、同控訴人においても、東京大学職員らの管理、作業に対し抗議や妨害をしていること、以上の事実が認められ、これらの事実によれば、上記の仮処分決定が執行された際、控訴人====が本件建物を共同占有していたことが認められる。同控訴人の陳述書てある乙41及び220には、同控訴人は平成7年4月以降は駒場寮に居住していない、上記認定の事実は同控訴人が駒場寮を占有していたことを裏付けるものではない旨の記載があり(ただし、乙41においては、駒場寮に部屋を持つサークルの責任者という立場上、自分が債務者の一人として認定されることについては異議がないという。)、また、同控訴人の住民票である乙135には、同控訴人が平成7年3月28日に駒場寮から文京区内に転居した旨の記載があるが、上記のとおり、同控訴人は平成9年3月6日の時点で旧北寮19Bを占有していることを自認していることや前掲各証拠に照らし、何ら上記認定を覆すに足りるものではなく、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(4) 証拠(甲5、10、11、14、28の1、37、42の7、47、59の1ないし9)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人====は、東京大学に在籍したことはなく、平成9年6月6日東京大学の玉井哲雄教授に対し、自分は京都大学出身であるが、駒場寮廃寮問題に興味を持ち、約半年前から駒場寮に居住している旨を述べたこと、同年3月29日に同年(ヨ)第601号事件の仮処分決定(明渡断行)が執行された際、旧明寮6Sを使用占有していたが、任意に明渡して本件建物に移動したこと、そして、同年8月7日に同年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定が執行された際、控訴人====は、控訴人====が本件建物に居住している旨、控訴人====は、控訴人====が旧中寮7Sを使用している旨をそれぞれ述ベ、同控訴人宛の郵便物も同室内に存在したこと、控訴人====は、東京大学職員らの管理、作業や同年6月28日のキャンパスプラザ建設工事のための仮囲い設置工事などに対し妨害行為を行ったこと、以上の事実が認められるから、控訴人====は、同年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定が執行された際、本件建物を共同占有していたことは、明らかである。控訴人====の住民票である乙136及び控訴人====の報告書である乙222は上記認定を覆すに足りず、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(5)証拠(甲3、5、10、11、14、28の1、37、42の5、47、60の1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人====は、東京大学に在籍したことはないが、平成9年3月29日に同年(ヨ)第601号事件の仮処分決定(明渡断行)が執行された際には、旧明寮13Bを使用占有していたこと、そして、同居室の任意明渡に応じた後、本件建物に移動し、同年5月23日(旧風呂建物につき、入り口の破壊された封鎖板の修復及び立入禁止の表示の添付の作業)及び同年6月25日(旧北寮及び旧中寮の占有状況の調査)の東京大学職員らの作業を妨害し、平成9年6月28日のキャンパスプラザ建設工事のための仮囲い設置工事も実力で妨害したこと、同年8月7日に同年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定が執行された際、控訴人====は、控訴人====が本件建物に居住している旨を述べたこと、以上の事実が認められるから、控訴人====は、平成9年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定が執行された際、本件建物を共同占有していたものと認められる。控訴人====の陳述書である乙126のうち、上記仮処分決定の執行の際、控訴人====が執行官に対し、控訴人====は本件建物に居住していない旨を述べたとの部分は、上記(1)で説示した事情に照らして採用することができず、また、控訴人====が形式的にも実質的にも駒場寮に入寮したことはない旨の同控訴人の陳述書である乙137は、前掲各証拠に照らして採用することができず、同控訴人の住民票である乙138(なお、住民票上の住所は====である。)及び控訴人====の報告書である乙222は、上記認定を覆すに足りず、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(二) 控訴人====、同====、同====について
(1)証拠(甲8、9、12、50の1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば、平成8年9月10日に同年(ヨ)第4302号事件の仮処分決定が執行された際、○○○○弁護士は、控訴人====を含む債務者らが本件建物を専用している旨の執行官の認定に特に異議を述べない旨の指示説明をし(なお、乙124によれば、この指示説明について、○○○○弁護士は、当該事件の各債務者が駒場寮内に居住していること自体は、あえて否定しない趣旨であると述べている。)、執行官はこの指示説明などに基づき同控訴人が本件建物を共同占有している事実を認定し、控訴人====はこの仮処分決定に対し異議申立てを行っていないこと、上記仮処分決定の執行の際旧中寮32Sに同控訴人宛の郵便物等があったこと、控訴人====は、平成8年4月24日に実施された旧駒場寮の渡り廊下一部取り壊し工事に対する抗議行動、平成9年1月14日の駒場寮廃寮反対集会(全国集会)にそれぞれ参加し、同年4月10日にキャンパスプラザ建設工事のための仮囲い設置工事用の資材搬入が行われた際にも、実力でこれを妨害していること、以上の事実が認められ、これらの事実によれば、上記の仮処分決定の執行がされた際、控訴人====が本件建物を共同占有していたとの疑いはある。
しかし、証拠(乙155、156、157、当番における控訴人====本人)によれば、控訴人====は、平成8年4月1日文学部思想文化学科イスラム学専修課程に進学したが、そのころから東京大学向ヶ丘学寮に入寮し、同所を生活の本拠としていること、そして、同年6月から平成9年1月まで向ヶ丘学寮の寮生大会議長又は寮委員長を務め、平成8年6月から文学部学友会の委員長としても活動していたことが認められるから、これらの事実に照らして考えれば、控訴人====には、本件建物について自己のためにする意思をもって事実的支配をするまでの実態はないというべきであり、駒場寮の廃寮を阻止するための手段として、上記の妨害行為に加わったり、一時的に駒場寮を占拠していた可能性も否定することができないから、控訴人====の本件建物に対する共同占有の事実については立証不十分というべきである。
(2) 証拠(甲5、11、14、47、48の1ないし3)によれば、平成8年9月10日の同年(ヨ)第4302号事件の仮処分執行の際、生井澤寛教授は、控訴人====が本件建物内に居住していることを確認していること、平成9年8月7日に同年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定が執行された際、控訴人====は執行官に対し控訴人====が本件建物に居住している旨を陳述したこと、控訴人====は、同年6月28日にキャンパスプラザ建設工事のための仮囲い設置工事が行われた際に、妨害行為に加わっていること、以上の事実が認められるから、これらの事実によれば、平成9年(ヨ)第4212号事件の仮処分決定の執行がされた際、同控訴人が本件建物を共同占有していた疑いも否定することができない。しかし、証拠(乙127、128、158、当番における控訴人====本人)によれば、控訴人====は、平成7年4月の東京大学入学以後も千葉県船橋市内(同年12月までは市川市中)の自宅で生活し、継続的に通学定期券を購入した上、交通機関を利用して東京大学教養学部に通学していたものであり、平成9年4月文学部行動文化学科に進学してからは、上記自宅から本郷キャンパスに通学していたことが認められるから、同控訴人が、時々駒場寮周辺に現れ、上記の妨害行為に加わったり、一時的に駒場寮に滞在していたことがあったとしても、本件建物を共同占有していたというには疑問を入れる余地があり、同控訴人の本件建物に対する共同占有の事実も立証不十分というべきである。なお、証拠(甲49の1、2)によれば、同控訴人の属するサークル「文藝理論研究会」が、サークル誌「槌音」に旧北寮2Sを活動場所及び部室として登載していることが認められるが、乙205の記載をも勘案すれば、上記の判断を左右するに足りない。
(3) 証拠(甲5、9、51)によれば、平成8年9月10日、同年(ヨ)第4302号事件の仮処分決定が執行された際、○○○○弁護士は、控訴人====を含む債務者らが本件建物を専用している旨の執行官の認定に特に異議を述べない旨の指示説明をし、また、同控訴人は、平成8年11月28日開催の旧南ホールへの電気供給停止措置に対する抗議集会に参加し、平成9年6月28日にキャンパスプラザ建設工事のための仮囲い設置工事が行われた際、同作業を妨害していることが認められるから、これらの事実によれば、上記の仮処分決定の執行がされた際、同控訴人が本件建物を共同占有していた疑いも否定することができない。
しかし、証拠(乙43、131、132、150、154、甲34、当番における控訴人====本人)によれば、同控訴人は、平成5年11月に駒場寮に入寮したが、平成8年3月末日に退寮し、同年4月1日に東京大学経済学部に進学してからは、====に住所を定め、同月から同年11月まで継続的に通学定期券を購入して本郷の同学部に通学していたこと、その後は東京大学井の頭学寮などに居住していること、学生が同年7月8日に配布したビラにも同控訴人は「元寮生」である旨記載されていること、以上の事実が認められるから、同控訴人においても、本件建物を共同占有していたというには疑問を入れる余地があり、同控訴人が所属するサークルであるジャーナリズム研究会が、週1回駒場寮のサークルボックスで学習会を開いている旨をサークル誌「槌音」に登載していること(甲52の1、2によって認める。)を考慮しても、乙205の記載をも勘案すれば、上記の判断を左右するに足りない。
以上によれば、控訴人====、同====、同====を除いたその余の控訴人らは、平成8年(ヨ)第4302号事件又は平成9年(ヨ)第4212号事件のいずれかの仮処分決定が執行された際、債務者として本件建物を共同占有していたものというべきである。」
2 同71頁最終行に「控訴人らは、学長と控訴人駒場寮自治会との間で駒場寮の事務処理に関する請負契約が成立し、この管理事務委託の合意に基づき駒場寮の管理権限が委譲されたとも主張するが、採用することができない。」を加える。
3 同79頁8行目から80頁3行目までの括弧及び括弧内を削除する。
4 同80頁6行目の次に、改行して、次のとおり加える。
「 もっとも、控訴人らは、本件廃寮決定は、実体上及び手続上の要件を欠くものであるところ、東京大学と控訴人駒場寮自治会又は学生との間には、駒場寮に関する大学の権限について、手続的要件を満たさない限りこれを行使しない旨の権利不行使の合意があったから、被控訴人は控訴人らに対し本件建物の明渡請求権を有しないとも主張するが、学長が、平成7年10月17日、諮問機関である東京大学評議会の決議のほか教養学部教授会の決定を経て、本件廃寮決定をしたことは前述したとおりであって、その過程に実体上、手続上の無効、違法事由があったことを認めるべき証拠はなく、また、控訴人らの主張する権限不行使の合意の成立を認めるに足りる証拠もないから、控訴人らの上記主張は採用することができない。また、控訴人らは、個々の寮生につき本件建物に関する賃貸借関係が認められる以上、入寮許可取消は不利益処分であり、告知・弁解・防御の機会の保障と不服申立ての教示がされなければならない旨主張するが、駒場寮の寮生らと東京大学との間で、本件建物につき賃貸借契約はもとより賃貸借類似の契約が成立したことも認めることができないことは前示のとおりであるから、この主張も採用することができない。」
5 同82頁6行目の次に、改行して、次のとおり加える。
「 控訴人らは、本件廃寮決定は裁量権の濫用に当たり、本件建物明渡請求は不法な意図によるものである旨を述べるほか、争点に関する当事者の主張のとおり、跡地利用計画は現実性を欠き、駒場寮を廃寮にするための手段として策定されたなどと主張するが、いずれも十分な根拠を欠くものであり、他にこの判断を左右するに足りる事情のあることを認めるに足りる証拠はない。」
第4 結論
以上によれば、被控訴人の控訴人====、同====、同====に対する本訴各請求は理由がないから、原判決中この請求を認容した部分を取り消し、被控訴人の同控訴人らに対する各請求を棄却し、その余の控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、65条、67条1項、2項を適用して、主文のとおり判決する。
なお、駒場寮が廃寮となった平成8年3月31日から5年以上も本件建物の違法占有状態が続いており、その結果駒場キャンパス再開発・整備計画の実行も著しく遅滞していることや、前示の本件の諸事情を考えれば、民事訴訟法259条1項の定める仮執行宣言を付する必要のあることは明らかであり、原審のこの点の判断も相当として是認することができる。