駒場寮「明け渡し」裁判の判決とその後の経過

3月28日、東京地裁にて、駒場寮「明け渡し」裁判の第一審判決が出されました。第一審判決の不当性解説集はこちら。

判決主文とその意味
当日の記者会見
判決後の経過


判決主文とその意味

主文

一 被告らは原告に対し、別紙物件目録記載一及び同目録記載二の各建物を明け渡せ。

二 訴訟費用は被告らの負担とする。

三 この判決は仮に執行することができる。
(ここでは省略していますが、以下に判決理由等も記されています。)

 一は、駒場寮自治会をはじめとする被告らは、国・大学側に対し、北寮・中寮の二棟 を明け渡せ、というものです。
 三は、この判決に対して被告が控訴したとしても、明け渡しの執行は先に行うことが 出来るという権利を原告側に与えるものです。(控訴審で被告側勝訴の場合は賠償金を 支払うこととなります)

当日の記者会見

判決日当日、弁護士会館5階にて寮側が記者会見を行いました。

<記者会見文の要約>

 駒場寮の明け渡し裁判で、明け渡しとその仮執行を認める不当な地裁判決が出された。我々はこれに対して即刻控訴した。
 駒場寮「廃寮」問題の発端は、東大教養学部当局が寮生を無視して、91年10月の教授会で一方的に駒場寮の「廃寮」を決定したことだ。東大は学生・寮生の懐柔策として、学生の自治権を剥奪した三鷹宿舎の建設や学内福利厚生施設の新設などの計画を提示したが、学生・寮生側は一貫して「廃寮」に反対してきた。だが学部当局は駒場寮「廃寮」を既成事実化し、数回のストライキや学生投票等に示された「廃寮」撤回の声を無視したまま、96年4月の「廃寮」宣言に至った。数々の暴力的な攻撃によっても寮生の追い出しに失敗した大学は、97年10月に駒場寮の明け渡しを求める裁判を起こした。我々は大学自治・学生自治を擁護する立場から、裁判での解決に反対してきた。
 昨年の国会で新大学管理法が制定され、現在も独立行政法人化への動きが既成事実化されつつある。一方では、大学自治の切り崩しと統制の強化、他方ではさらなる「受益者負担」の徹底化という大学改悪の流れがいよいよ本格化している。憲法調査会が設置され、憲法改悪に向けた動きが活発化しているが、新大管法・独法化という間接的な自治剥奪にとどまらず、「学問の自由」や「大学の自治」、「教育の機会均等」などの諸原則が憲法レベルから抹消される可能性も高い。小渕首相は「教育改革国民会議」初会合の冒頭、『戦後教育の総点検』を宣言した。
 こうした流れがあるからこそ、我々は学生や教職員の自主性を尊重する大学自治、そして我々の培った学生自治の意義を重ねて強調する。同時に、不況が続きリストラが横行し学費は上がる状況で、低所得層の教育権を擁護する学寮の必要性はますます高まっており、ゆえに我々の実践として入寮募集も続行する。これは駒場だけの問題ではなく、これらの問題が集中的に現れている駒場寮問題から我々が突破口を切り開かねばならない。
 最後に、裁判所に提出した四千筆以上もの『公正な判断を求める要請書』は、駒場寮問題に対する社会的関心の高まりを反映している。我々は今後も大学自治や学生自治の擁護、教育を受ける権利の擁護を掲げ、また学内での話し合いによる解決を追求しつつ、闘い続ける。

駒場寮委員会

判決後の経過

 こうして明け渡しとその仮執行を認める判決が出されたわけですが、寮側は、判決理由の中で、寮側が最も強く主張した、91年当時の事前に合意を得ないままの突然の廃寮決定の問題性に全く触れられていない、等の理由で、この判決を不当として即時控訴を行いました。この控訴は認められ、裁判は高裁で争われることとなりました。  また、仮執行宣言が付帯した判決であるために、控訴が認められたとしても寮の明け渡しは執行できる、という状況でしたが、これについては寮側が「仮執行停止の申し立て」を行い、これが東京地裁に認められたため、明け渡し強制執行は避けることができました。

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