平成九年一月三一日
東京地方裁判所 御中
東京大学教養学部等学生課長 右松鉄人(印)
一 旧駒場学寮は、東京大学教養学部の管理する学寮であり、学寮の管理は学生課の担当になっておりますので、私は、当職に就任以来、事務上の直接の責任者として、旧駒場学寮をめぐる問題に携わってきました。
以下、債務者らによる本件建物の占有の態様が、著しく違法性の強いものであり、また、駒場キャンパスの平穏を著しく妨げていることについて、ご説明申し上げます。
二1 債務者らは、一泊二○○円の料金を徴収して、大学とは無関係な学外者を本件建物に宿泊させたり、学外の団体等に集会の場所として使用させることをしております。そして、債務者らは、これを自らの権限に基づく正当な行為だとしております(甲二五をご覧ください)。
2 宿泊している学外者の氏名はおろか、その人数についても、詳しいことは、当職にも把握できていません。しかし、とりわけ、一一月以降、本件建物周辺にたむろする学外者が急増していることは、学生課の職員から報告を受けています。 このような学外者は、ただ単に宿泊するだけでなく、債務者らと酒宴に及び、その結果、急性アルコール中毒になる有様で、平成八年一一月一○日、同年一二月六日には、深夜、救急車が出動するという事態にもなりました。末尾添付資料1、2は、教養学部等総務課の勤務日誌です。救急車出動の事実が報告されています。
3 学外団体については、たとえば、「銭湯的学生連合」と名乗る団体は、自らの連絡先を「北寮2S」(本件建物の一部)とするビラ(末尾添付資料3)を発行しております。したがって、債務者らがこの団体に対して本件建物の利用を許していることは明らかです。さらには、債務者らは、以前から、都寮連、全寮連とよばれる団体に対しても、本件建物の利用を許しております。
実際には、これ以上の多数の団体に対し、債務者らは本件建物の利用を許していると思われますが、その実態もまた、把握できておらず、管理不能の状態にあります。
4 学外者を含む集会としては、「廃寮反対全国集会」とよばれる集会を、その最も大規模なものとして挙げることができます。平成八年六月一六日の集会(末尾添付資料4)には、京都大学、信州大学などの学生が多数集合し、本件建物を根城として行動しました。彼らは、デモ行進の後、教養学部長室のある一○一号館に乱入しようとしましたが、このときも債務者らのほか、多数の学外者が含まれていました。その応対にあたった永野三郎教授が緊急入院に至ったのは(申立書で述べられています)、このときです。
同様の集会は、平成九年一月一四日にも開催されました(末尾添付資料5)。このときは、債務者らと学外者らが、一○一号館に現実に乱入し、さらに学部長室に乱入しようとしました。このとき、応対にあたった教官の中には、彼らから、髪の毛を引っ張られるなどの暴行を受けた者もおります。
また、平成八年一二月三一日から翌年一月一日にかけては、債務者らは、学外者の団体らと、本件建物内で宴会を張り、もはや傍若無人といった状態です。
三1 以上のような状態は、用途廃止前ですらも東京大学教養学部に属する学生のための厚生施設であった本件建物を、その厚生を享受できないはずのものに利用させている点で問題があるのはもちろんです。さらに、二○○円の料金徴収というのは、債務者らが国有財産を利用して利益を得ているわけであって、これももちろん容認できません。しかし、当職の立場から、ぜひ指摘しておきたいのは次の点です。
2 本件建物は、そうでなくても、二回にわたり不審火を起こしていますが(申立書)、その後、債務者らの手によって、盗電に伴う異常な配線、プロパンガスボンベの搬入、石油ストーブの搬入がなされています。これは、債務者らが、本件建物内に可燃物を多数有していることと相まって、きわめて危険な状態を引き起こしております。そこに、さらに学外者を出入りさせることによって、事故または不審者による放火等による火災が発生する危険性は、著しく高まっています。また、東京大学教養学部では、近時、盗難による被害が多くなっていますが、この観点からも、学外者が多数出入りしていることは、多いに憂慮されるべき事態です。
そして、たとえば平成八年一二月三一日から翌年一月一日にかけての宴会は、年末年始という管理要員が手薄になる時期に多数の学外者をキャンパス内に引き入れるものであって、まさに言語道断です。また、それ以外の場合でも、夜間は管理がどうしても手薄になります。学外者の夜間宿泊は、管理上、とうてい容認できないのです。
3 また、直接的には学外者とは関係しませんが、債務者らは、窃盗行為にも及んでおります。繰り返しご説明申し上げている盗電のことはもちろんですが、それ以外にも、債務者らは、教養学部所属の国有財産であるカメラを強奪しております。すなわち、教養学部は本件建物の管理責任を果たすため、教官を動員して、本件建物内部の状況を確認し、現状をカメラで撮影するということを試みたことがありますが、このとき債務者らによりカメラを強奪されるのです。具体的には、平成八年七月一日および同年一一月一四日のことです。もちろん、教官は、債務者らに返却を求めましたが、拒否され、いまだそのカメラを取り戻すには至っておりません。
平成九年一月一四日には、「廃寮反対全国集会」の模様を撮影した学生が債務者らに取り囲まれ、カメラを取り上げられました。債務者らは、このカメラを路上にたたきつけて壊したり、本件建物内に持ち去ったりしております。
いずれも明らかな窃盗行為であり、駒場キャンパスを管理する立場から、一刻も放置できない事態です。
四 これらの事態すべては、すでに用途廃止手続が行われている本件建物に、債務者らが居住を続けるという違法行為によって引き起こされております。債務者らに本件建物からの退去を命じる処分が一刻も早く下されることを、当職の立場からも強く望んでおります。
以上
添付資料
1 勤務日誌(1996/11/09)
2 勤務日誌(1996/12/06)
3 「銭湯的学生連合」ビラ
4 「6・14廃寮反対全国集会」ビラ
5 「1・14廃寮反対全国集会」ビラ