東大・駒場キャンパス(東京都目黒区)内の駒場寮の存廃をめぐり大学側と学生側が対立している問題で国は、学生らに寮の明け渡しを求める仮処分を二十三日までに東京地裁に申請した。
明け渡しを求められたのは学生四十六人と同寮自治会など三団体。今月下旬にも同地裁が国側と学生側から事情を聞く審尋を予定している。
同寮は鉄筋コンクリート三階建て三棟で、演劇やサークル、自治活動の拠点になっていたが、築後約六十年を経て大学側は取り壊しを決定、電気やガスも止めて昨年四月には廃寮宣言をした。九月に「占有移転禁止」の仮処分を申請した。
これに対し、「学内に自治活動の拠点は手放せないし、転居は経済的にも厳しい」とする学生たちはほかの建物から電気を引くなどしてとどまり、OBを中心に弁護団も結成した。
今回の申請に大学側は「学生には新しく学外に建てた宿舎に移ることを勧めており、速やかに出てほしいと呼び掛けてきた。裁判所の判断を待ちたい」と話し、寮側は「法的には徹底して闘うが、あくまでも話し合いで解決したい」としている。
建築後60年以上を経過し、老朽化した東京大学教養学部(東京都目黒区)の廃止をめぐり、国は22日までに、寮内に残っている学生と同寮自治会に対し、建物の明け渡しを求める仮処分を東京地裁に申請した。大学側が「廃寮」を決めた後も、学生たちが一年近くも住み続けている”異常事態”は、法廷の場で争われることになった。
大学側は昨年4月、老朽化や入寮募集者の減少などを理由に、同寮の「廃寮宣言」を出した。電気やガスの供給も停止してきたが、寮を自主管理してきた学生たちは「学生自治の拠点を奪うな」「貧しい学生の生活の場を守れ」などと反発、近くのサークル棟から電気を引くなどして、その後も寮で暮らしている。大学側はこれまで、寮に残る学生に退去を求め、教官らが「説得班」を組織して寮内を回ったこともあったが、学生側は他大学の学生も招いて反対集会を開くなどして抵抗、同大OBの弁護士らも弁護団を結成して支援してきた。
このため国は昨年9月、同地裁に「占有移転禁止」の仮処分を申請し、寮内に残っている学生を特定。そのうえで今回、”定住者”の48人の学生と同寮自治会に対し、明け渡しを求めることにした。今月末にも同地裁が、国、学生側の双方から事情を聞く審尋が始まる。
駒場寮は、旧制一高時代の1934年に建てられた鉄筋コンクリート3階建てで、現在3棟が残っている。これまで学生運動や演劇活動の”とりで”としても知られ、一時は700人以上が暮らしていた。前経済企画庁長官の田中秀征氏や作家の畑正憲氏らも寮生活を送った。
大学側は91年、同寮を廃止して東京都三鷹市に建設した「国際学生宿舎」に統合することを決定。跡地には文化、スポーツ施設などからなる「キャンパスプラザ」を建設する計画で、今年度予算に、三棟ある同寮の取り壊しと一部施設の費用を計上している。
現在は寮内のほとんどの部屋が施錠されているが、一部の部屋で、学生が、石油ストーブを持ち込むなどして寒さを乗り切ろうとしている。また、サークルが活動の場に使ったり、終電に乗り遅れた学生が一晩だけ泊まっていくこともあるという。
今回の仮処分申請について、担当の池田信雄教授は「今年度中に取り壊しに着手し、来年度への予算繰り越しを避けたい。学生との話し合いも続けていくが、仮処分が認められれば、速やかに退去してくれると思う」と話している。これに対し、学生側の加藤健次弁護士は「学生自治の根幹にかかわる重要な問題」とし、須藤虎太郎・同寮委員長も「全面的に争いたい」と、対決姿勢を強めている。
東大駒場キャンパス内(東京・目黒区)にある駒場寮の存廃をめぐる問題で、東大教養学部学生自治会委員長と駒場寮委員会委員長は二十八日、記者会見をおこない、学部当局と国が裁判所の命令によって寮生を強制的に駒場寮から追い出そうとしていることに抗議する緊急声明を発表しました。(4面に関連記事)
学部当局と国は、四十九人の学生(三団体含む)を駒場寮を“不法占拠している者”と決めつけ、強制明け渡しをもとめる仮処分の申し立てを二月五日東京地裁におこなっています。
声明は、この申し立てを、大学の中の問題を大学構成員の話し合いによって解決するという「大学自治の原則をまっこうからふみにじる大学の自殺行為」と批判。駒場寮問題を、自治を保障された学問の府にふさわしく誠実な話し合いで解決するよう学部にあらためてもとめています。
また、二月二十五日付で出された学部長名の文書で“強制明け渡しになれば、その執行に要した総額一億円以上、一人当たり二百万円以上を各人から取り立てるこなる”と脅し、“それがいやなら三月五日までに退去せよ”と迫っていることにたいして、「地上げ屋そのもの。学問を職として、教養学部を代表する者が口にすることか」と批判しています。
記者会見した荒金哲自治会委員長は、「裁判所の力をつかい、寮生を恫喝(どうかつ)してでも寮から追い出そうというやり方は絶対許せません」とのべました。須藤虎太郎寮委員長も、「廃寮計画に寮生は一貫して反対してきた。あくまで話し合いによる解決をもとめていくが、法廷でも正々堂々と主張をのべ、たたかっていく」と語りました。
記者会見には、「不法占拠者」と名指しされた全日本学生寮自治会連合(全寮連)と東京都学生寮自治会連合(都寮連)の両委員長も同席し、全国的にも抗議の世論を高めていくと表明しました。
〔『“地上げ屋以上”の寮生追い出しに抗議して緊急声明を発表する学生の代表たち=2月28日、東京・東大駒場キャンパス』と題した写真も掲載〕
大学が学生を裁判にかけるなど、本来あってはならない、まったく悲しむべきことです。「不法占拠者」と名指しされた学生のなかには、すでに卒業したり、寮には住んでいない人が含まれていたりするなど、全体にいいかげんなものです。
二月二十五日付の学部文書は、常軌を逸したものです。国・大学側の申し立てにたいして、今月六日に寮生たちは裁判官の前で反論する予定になっています。ところが、この学部文書は、五日までに出ていけ、さもなければ一億円以上を支払うことになるぞと脅しをかけて、その反論さえ許さないというものです。裁判所の結論はおろか、反論の機会もこれからという段階で、お金で脅して法律で保障された反論さえ許さない、こんな事例は聞いたことがありません。
それに、かりに仮処分が執行され、寮生の荷物を運び出すとしても、百人を動員しておおがかりにやったところでせいぜい数百万円程度で、一億円なんてなんの根拠もありません。こうしたウソまでついて寮生に脅しをかけるやりかたそのものも争っていきたい。
大学自治のルールにもとづきやっている 駒場寮生
「不法占拠者」と名指しされ、二月二十五日付学部文書を届けられた寮生の一人(21)は次のように話しています。
ぼくたち学生や寮生は大学自治のルールにもとづきやっています。学部がぼくたち寮生のことを、“不法占拠している、暴力学生”と描いているのは頭にきます。寮生は、電気やガスを止められて苦しいけど、まじめに勉強して、しっかりした学生生活を送ってているということも訴えたい。
東京大学駒場キャンパス(東京・目黒区)内にある駒場寮の寮生を強制的に追い出そうと、東大当局と国が明け渡しの仮処分を申し立てている問題で、六日に東京地裁で寮生側への事情聴取(審尋)がおこなわれました。学生・寮生の代表は七日に東大駒場キャンパス内で記者会見し、その内容と見解を発表しました。
五十人近い寮生らが整然と参加した事情聴取では、寮生たちの駒場寮に居住する権利、仮処分の不当性などを寮生側が主張しました。これにたいし国側は、裁判所がもとめた駒場寮跡地のキャンパス・プラザ建設計画の図面の提出をしぶるなど、道理のなさをさらけだしました。
また、寮生側弁護団は、大学当局が二月二十五日付で学部長名で寮生にだした、「三月五日までに退去しなければ、総額一億円以上の仮処分執行費用を負担することになる」と退去を迫る文書を裁判官に示し、「根拠のない金額をあげて寮生を脅し、本日の裁判所による事情聴取をも妨害するもの」と申し立てました。地裁からは、「国側代理人にたいして、今後こうした行為をおこなわないよう伝え、国側も約束した」との回答がありました。
一八日に第二回の事情聴取がおこなわれることになりましたが、国側は一八日で審理を打ち切り、仮処分決定をだすよう求めており、緊迫した状況がつづいています。
記者会見した○○○○○駒場寮委員長、○○○教養学部学生自治会委員長らは、「学部当局が不当な仮処分の申し立てを撤回し、話し合いに応じること、地裁が仮処分の申し立てを却下することを求める世論を急速にひろげていく」「二月二十五日付学部文書の不当さが裁判所でもあきらかになった。文書をただちに撤回し、謝罪することを強く要求していきたい」と話しています。
六日の東京地裁でのやりとりであきらかになったことは、大学当局・国側が明け渡し断行の仮処分を裁判所にもとめておきながら、仮処分を申し立てる必要性・緊急性の論拠を示せなかったことです。
国側は、「駒場寮跡地に建設するとしているキャンパスプラザの建設予算を返上せざるをえなくなる」と主張しながら、キャンパス・プラザ建設計画の図面の裁判所への提出をしぶり、十一日に提出することになりました。
寮生を恫喝(どうかつ)する二月二十五日付学部文書について、裁判官から注意を受けたこととあわせ、学部当局のやりかたの道理のなさが、裁判所でもさらけだされたといえます。
また学部当局が、大学自治についてはまったく言及することなく、「とにかく早く仮処分決定をだしてくれ」という態度に終始していることは、学部当局の「学生・寮生とは十分議論する」とのこれまでの言明にもまったくそむくものです。大学自治、学生の自治をふみにじり、学部当局と学生との慣例とルールにそむいて強制的に寮生を追い出すようなことは、法律的にも許されません。裁判所には、慎重な審理をもとめます。
学生・寮生側弁護団は、仮処分申請の全面却下にむけて全力をつくしていきます。
全日本学生寮自治会連合(全寮連・○○○委員長)は五日、都内で開いた全寮連第三十九回定期大会で、東大駒場寮問題での特別決議を採択しました。
特別決議は、「駒場寮問題は、寮生を裁判にかけるようなやり方では解決しえません」と東大当局を批判し、「東大当局は、明け渡し仮処分の申し立てを取り下げ、寮生・学生との話し合いによる問題解決を」と求めています。
また、東大当局に抗議を集中することをよびかけています。
東京大学当局と国(法務省)は、東大駒場寮(東京・目黒区)から、寮生を強制的に追い出そうとして東京地裁に明け渡しをもとめる仮処分申請を先月おこないました。東京地裁は一八日に寮生から二度目の事情聴取をおこない、結論をだそうとしており、緊迫した局面を迎えています。
大学当局・国側は、仮処分が緊急に必要であるとの論拠として駒場寮の跡地に予定しているキャンパス・プラザ建設計画(主としてサークル施設。学生側はサークルが駒場寮で使用している面積と比べ大幅に減少し、二十四時間使用できないなどの問題点を指摘している)の予算執行をあげています。
寮生側は、学生の合意のない駒場寮廃寮とキャンパス・プラザ建設をごりおしせず、学問の府にふさわしく、大学当局が学生・寮生と誠意をもって話し合い、解決すべきと訴えてきました。国会議員や政党にも要請してきました。
日本共産党国会議員団は十四日、文部大臣、法務省の官房長らとあい、「仮処分決定を急がず、東大当局と学生による話し合いによる解決をはかるよう」求めました。
法務省の頃安健司官房長には、正森成二衆院議員、橋本敦参院議員が要請。正森議員は、「キャンパス・プラザ計画の年内執行ができなければ予算がだめになり損害がうまれると東大当局や裁判所が心配しているようだが、実際は違う」と指摘。十三日に大蔵省主計局文部第一、第二係主計局主査とあい確認してきた内容を説明しました。
その内容は次の三点です。
(1)一般論だが、土地の一部の買収や立ち退きが遅れるなど、事情の変更により予算が執行できなかった場合、執行官が事情を述べて年度がかわったのちに大蔵省に申請すれば予算繰り越しはできる。
(2)十二億円のキャンパス・プラザ計画についても仮に処分が認められても、立ち退き、建物のとりこわし、建築等を考えると年度内に執行ができないことはある。その場合も予算繰り越しはできる。
(3)繰り越しになったことについて財政当局がペナルティーを課すようなことはしない。
予算執行問題が話し合い解決の障害にならないことを示しました。
頃安官房長は、「趣旨はわかったので訟務局によく伝えるが、私どもは訴訟代理人であり文部省、東大当局の意向をふまえて対処せざるをえない。主役は文部省、東大当局である」とこたえました。
小杉隆文部大臣には、石井郁子、山原健二郎両衆院議員、橋本、阿部幸代両参院議員が要請。正森議員が財務当局と確認した内容を示し、「時間は十分ある。学問の府にふさわしく学生と十分話し合って、解決の方向をみいだすべきだ」と申し入れました。
小杉文相は、「よくわかった。大学の自治もあるのでああしろこうしろという立場ではないが、できれば話し合いがつけばいい」とのべました。
駒場寮自治会は七日に総代会を開き、「明け渡し断行仮処分決定を断固阻止しよう」との決議を出席総代の全員一致で採択しました。総代会では「大学当局の横暴は許せない」「当局のやりかたは学生無視もはなはだしい」との意見があいつぎました。
「寮生の強制追い出しをやめ、誠実な話し合いによる解決を求める」アピールへの賛同を広くつのる、「十分な審理をおこない、慎重に検討し、構成な判断をくだす」ことを求める要望書を東京地裁に集中することをきめ、さっそく行動をはじめています。
大学は春休み中ですが、学生自治会は十二日に自治委員(各クラスの代表)の集会を開きました。荒金哲自治委員長の報告をうけ、自治委員が「学部当局のこういうやり方を許したら、学生会館なども学生の意見を聞かずに強引につぶされたり、移転させられてしまう」と次つぎ発言しました。
三十七人の自治委員がアピールに賛同し、連名で学内に立て看板をだしました。
駒場キャンパスでは十一日から、入学手続きに訪れている新入生にたいして、東京地裁にだす要望書への賛同を呼びかけています。十四日現在、新入生の三分の一近い約千人が賛同署名をしました。
○○○○○駒場寮委員長は、あたりまえの要求ですから、賛同が広がっています。裁判所は、この千人の声を重く受けとめてほしい」と話しています。
駒場寮廃寮問題がもちあがったのは九一年のこと。大学当局が、老朽化などを理由に駒場寮廃寮と三鷹学生宿舎の建設計画をうちだしました。
学生たちは、代議員大会などで三鷹学生宿舎との抱き合わせの駒場寮廃寮に反対との態度を決議。学部当局は同年十月二十四日の説明会で学生たちに「今後一方的には強行しない。計画を実行するかしないかまで含めた交渉に応じる」と約束していました。その後も学生たちは、全学投票で「駒場寮存続」を批准(九五年十二月)するなど寮の存続を求めてきました。
ところが大学当局は一方的に、駒場寮は九六年三月三十一日をもって廃寮になったとして寮生に退去命令をだし、昨年四月八日には電気、ガスの供給を停止、解体工事を強行しようとしました。東京地裁への仮処分の申し立て(今年二月四日)は、大学当局の問答無用の態度をさらにエスカレートさせたものです。
駒場寮は、戦前の第一高等学校(一高)時代から今日まで、入退寮の選考をふくめ、全面的に寮自治会が管理・運営してきました。
大学当局も、学生による寮自治を認めてきました。六九年六月には、駒場寮自治会をふくむ東大寮連とのあいだで、「『入寮選考』は寮生」がおこない大学当局は「『入寮選考』の結果については干渉しない」との確認書をかわしています。八四年五月には教養学部第八委員会が、駒場寮自治会とのあいだで、寮自治の慣行を尊重し、「寮生活について大学の公的な意志表示があるとき、第八委員会は、寮生の意見を充分に把握・検討して、事前に大学の諸機関に反映するよう努力する」などを確認しています。
大学当局・国側が東京地裁に提出した申立書は、これらの経過を無視するとともに、明け渡し仮処分の論拠をキャンパス・プラザの予算執行に障害をきたすことに求めています。
ところが、六日におこなわれた東京地裁による寮生らの事情聴取で、寮生側弁護団が、「公表されている大学当局のプラン図面をみても、キャンパス・プラザ計画にかかるのは北側の明寮だけだ。どうして三棟とも明け渡す必要があるのか」と追及。大学・国側はこれにはこたえられませんでした。
また弁護団は、大学当局が二月二十五日付で学部長名で寮生にだした「三月五日までに退去しなければ、一億円以上の仮処分執行費用を負担することになる」という恫喝(どうかつ)文書を示して「一億円以上などとウソをつき、しかも裁判所の事情聴取をも妨害するような文書をだすことは許されない」と大学当局を批判しました。これをうけて裁判官は、国側にたいし、今後こういう行為がないようにと注意をあたえ、国側も了承しました。
さらに今回、日本共産党国会議員団が政府との折衝をつうじて、今年度に予算が執行できなくても繰り越し措置ができることが明らかになり、明寮をふくめて仮処分を求める大学当局・国側の論拠は崩れました。大学当局・国側のとるべき道は、学生との十分な話し合いによる解決にふみだすことではないでしょうか。
日本共産党の正森成二衆院議員は十八日、衆院法務委員会で東大当局と国(法務省)が東大駒場寮(東京・目黒区)から寮生を強制的に追い出そうと東京地裁に明け渡しをもとめる仮処分を申し立てている問題について質問しました。
国・東大当局は仮処分を申請する緊急性・必要性の最大の根拠として、駒場寮跡地に建設するとしている「キャンパス・ブラザ」建設予算が九六年度予算で十二億円ついたが、「九七年七月までに着工できなければ予算を返上しなくてはならなくなる」と主張しています。
これについて正森議員が「事実に反するのではないか」とただしたのにたいし、大蔵省の飯原一樹主計官(文部、科学技術・文化担当)は、「年度内執行ができない場合は次年度に繰り越す条件で、右予算を含め国会の承認を得ている」と答え、国・東大当局の申し立ての根拠がくずれました。
正森議員は、「国・大学当局の主張は事実と違い、学生も裁判所もあざむくもの」と批判。大学当局が昨年四月に寮への電気・ガスの供給を止めたことや、寮委員会と教養学部の間の「寮生活に重大なかかわりを持つ問題について、寮生の意見を充分に把握・検討して、事前に大学の諸機関に反映させるよう努力する」との確認書(八四年)も示し、「こうした合意をふみにじり、ムリにことをすすめれば、こじれるのはあたりまえ」と指摘しました。
また、大学当局が学生たちに出した学部長名の文書のなかで、「仮処分断行ということになれば、総額一億円以上の費用を負担することになる、就職後の給料の差し押さえもありうる」とのべていることをあげて、「いやしくも教育者が学生にたいしていう言葉か」と批判、「お互いに話し合えば解決することは、時間的にも十分可能」と主張しました。
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東大当局と国(法務省)が東京地裁に駒場寮(東京・目黒区)の明け渡しをもとめる仮処分を申し立てている事件で、寮生の意見を裁判所が聞く第二回事情聴取(審尋=しんじん)が十八日、東京地裁でおこなわれました。
約四十人の寮生らが地裁につめかけ、須藤虎太郎寮委員長ら三人の寮生代表が、駒場寮の必要性や、学生の自主的・自治的活動や人間形成にとってのかけがえのない役割を冒頭十分間訴えました。
寮生側弁護団と国・東大当局側とのやりとりのなかで、寮生側は大学自治、学生自治にもとづく意見を正面から展開しましたが、国・大学当局側は論争そのものを一切避けました。
このため、明け渡しの緊急性・必要性の有無が最大の争点となりましたが、この点でも国・大学当局側の論拠が次つぎに崩れました。
また、小出昭一郎元東大教養学部長をはじめ、数名の東大教授、元教授から慎重審理と公正な判断を求める陳述書が、寮生側弁護団を通じて裁判所に提出されました。
駒場寮跡地に建設する予定の「キャンパス・プラザ」建設予算が九六年度予算でついており、「遅くとも今年七月までに着工できなければ、予算を返上しなければならなくなる」というのが国・大学当局の最大の論拠でした。これにたいし、寮生側弁護団が「その予算は最初から年度内に執行でさないときは九七年度予算に繰り越される条件になっている」と指摘すると、「しかし、次の(九八年度)予算まで繰り越されるとは限らない」と後退してしまいました。
国・大学当局側は、「CCCL計画」なる「キャンパス・プラザ」を含む駒場キャンパス全体の再開発計画の図面を新たに裁判所に提出し、駒場寮を取り壊さないと「この再開発計画自体が頓挫(とんざ)してしまう」と主張しました。
しかし、図面にある図書館建設の位置が既に学内で公表されている図書館建設計画の図面の位置と異なっていることが寮生側から指摘され、学内合意はおろか教授の間でも合意のできていない流動的な計画にすぎないことが明らかになりました。
国・大学当局側は、寮生による駒場寮占拠が重大な保安や治安上の問題を生じさせており、火災などの事故発生の危険性も極めて高く、一時も放置することができないと主張しました。
しかし、寮生側が「寮生がいるから火災がおきる危険性が高いと、現在も思っているのですか」と問いただすと、「そんなことは思っていない」と大学当局の一人が口走り、他の国・大学当局側のメンバーがあわてて制止するという失態を演じました。
裁判所は、国・大学当局側に学生との話し合いによる解決の意思はないのかとたずねましたが、国・大学当局側は「その意思はまったくない」と拒否。あくまで仮処分の決定を求めました。裁判所は、さらに慎重な審理をもとめる寮生側の主張にもかかわらず、事情聴取を今回で打ち切ることを決めました。
寮生らは事情聴取終了後、弁護団とともに集会をひらき、新たな陳述書を東京地裁に提出すること、すでに十日間で二千通以上寄せられている「東京地裁にたいし憤重で公正な審理をもとめる要望書」をさらに集めて提出することなどを決め、「たたかいは終わったわけではない。これからがまさに正念場」(須藤寮委員長)と決意を固めています。
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国・大学当局が大学自治・学生自治についての議論を避けたことは、これまでの“学生・寮生との話し合い、学生自治の尊重”との大学当局の言明を投げ捨てるもので許しがたいものです。大学当局は、大学で学生といっしょに大学自治を守り、学問の自由のもとに研究、教育をおこなう責任をもっているはずです。それが国の役人とまったく同じことしかいわないのは、嘆かわしいかぎりです。
また、たった二回のやりとりで大学の自治、学生の自治という問題の判断ができるはずもなく、審尋を打ち切ったことは遺憾です。
国側の仮処分申請をもとめる緊急性・必要性の論拠は次つぎ崩れました。裁判所での論戦では、寮生側が完全に勝利したといって差し支えないと思います。
裁判所の決定がまもなくでるでしょうが、論戦の中身からして、裁判所が公正・中立な立場に立つかぎり、国・東大当局が要求するとおりに仮処分決定をだして寮生を即刻追い出すようなことはないものと確信しています。
【写真1点】東京地裁前で、駒場寮問題についてのビラを配布する駒場寮生たち=19日、束京・千代田区
東京大学教養学部の駒場寮(東京都目黒区)の配寮に反対している同大教養学部学生自治会の荒金哲委員長(19)が20日会見し、国が明け渡しを求めて東京地裁に仮処分を申請していた寮の建物3棟のうち2棟を明け渡し対象から取り下げる申請内容の変更届が、国から出されたことを明らかにした。
申請内容の変更について同学部評議員の永野三郎教授は「できれば3棟とも明け渡しを求めたいが、(跡地利用のうえから)より緊急性を要する1棟について明け渡しを求めることにした」と話している。