<作成日> 1996. 5. 9
以下は文書「学生の皆さんへ」の配布を教官に「要請」するために教養学部 長名で出された文書です。
1996.5.1 教 官 各 位 説明文書「学生の皆さんへ」配布のお願い 教養学部では、駒場キャンパスの学生に対して駒場寮廃寮問題の経緯と学部
の態度を説明するために文書 旧駒場寮には現在学外者が多数出入り寝泊まりし、旧寮取り壊し作業を実力 で阻止しています。さらにまた、旧駒場寮学生や学生自治会は、駒場寮廃寮問 題について事実歪曲や誤りに満ちた宣伝ビラなどを多数配布しているというこ ともあります。こうした事態に対処するために、教養学部では今後一般学生に たいして充分に事情説明をおこない正確な認識をもってもらうための活動を今 まで以上に強化する必要があると考えています。 つきましては、先生方にご協力いただき、用意いたしました説明文章を、授 業開始前あるいは授業後に学生に配布していただけないでしょうか。その際、 学生たちにこの文書をよく読み状況を理解して判断するようにアドバイスして いただけましたら幸いです。さらに説明が必要だという学生には、この問題に ついての説明会を学部が計画している旨お伝え下さい。 なにか、ご質問・ご意見がおありの方は学部長室までご連絡して下さい。学 部では、今後もさらに同種の説明文書を出していく予定です。その点につきま しても、あらかじめご理解・ご協力をお願い申し上げます。 以上、何卒よろしくご協力の程お願い申し上げます。 教養学部長 市村 宗武 |
ちょっとだけコメントを。
本文においては、「旧駒場寮学生や学生自治会は、駒場寮廃寮問題について 事実歪曲や誤りに満ちた宣伝ビラなどを多数配布している」とあり、
それに続けて「教養学部では今後一般学生にたいして充分に事情説明をおこな い正確な認識をもってもらうための活動を今まで以上に強化する必要があると 考えています」とあります。ここはけっこう「あやうい」箇所なのだと思うのですが、学部にはどうやら 「正確な認識」を与えられるのは「自分たち」(という言葉遣いが適当である のかはちょっとおぼつかないのですが←何しろ顔の見えない人たちですからね え←イヤミ)である、という根拠のない「思い込み」が滑べり込んでいるよう に思います。
だからといって、学生側のふれまわる情報が正確で正しい、だなんて強弁す るつもりはさらさらなく、率直な感想を云えば、「自分が正しいと声を大にし て主張する人間を信用してはならない」という経験則に衝き動かされている、 ということであり、いまの学部当局がまさにそれに近いのではないか、という 「印象」(に過ぎないものではあっても)があるわけです、ハイ。
(もちろんその疑いは、学生側だって免れているわけではありません)
この駒場寮廃寮問題をめぐっての「正確な認識」なんてものがあると仮定し たとしても(「ない」というのがぼくのいまの感慨ですが)、いまだ対立して いる意見が、双方ともにある程度以上の説得力を持ちつつ拮抗している現状に あっては、まだどちらが「正確」で正しいだなんて結論は出せないことですし、 時期尚早といえると思います。
そりゃあもちろん、自分が正しい、と信じることはひとの勝手なのですが、 それを人に説得し納得してもらおうというのであれば、とるべき適正手続きや 充分な根拠の提示、反対意見に対しても議論の途を開いておく誠実さ、そうし て忍耐強い努力が必要なのだと思うのです。そしてそれは双方ともに充分では ないのだとも。
ですからこの文書において書かれるべきことは、「学生たちにこの文書をよ く読み状況を理解して判断するよう」促すことではなく、「学生たちにこの文 書と学生側のビラとをよく読み比べて、不審な点は双方に問い正し、自らの判 断に基づいて、この駒場寮廃寮問題に対する立場を決めるよう」アドバイスす ることこそが、(嫌な言葉ですが)「理性の府」たる大学の教官の語るべきこ となのだ、ということなんだと思います(そんなことは学部長に云われるまで もない、馬鹿にするな、という教官の反感を呼ぶかもしれないにしても)。
(「ちょっとだけ」どころではなくなってしまったなあ。なんだかすごくマト モなことを書いちゃったりなんかしてるし。ああはずかしい。ポッ←赤面)
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